佐藤俊夫先生との出会いで、私の長年の“医者嫌い”が一変しました。中学3年という多感な時期に父親を突然亡くし、その際の医者の対応に不満を抱いた私は以来、西洋医学の医師を毛嫌いしてきました。嫌いというより、敵対心のような感情でした。しかし、私が狭心症で緊急入院した際に、先生は薬や食事、心の持ち方などについて、西洋と東洋、両方の医学の観点から助言をくださいました。そして「西洋医学も救急の時は大切ですよ。立石先生はお父様のことがあって深く傷つかれたと思いますが、それは許してくださいね」と諭してくれました。

私自身が実際に危機を西洋医学に助けられ、西洋医学の医師でありながら東洋医学にも精通している先生と出会ったことで、負の想念は完全に拭われ、ずっと抱え続けてきた敵対心が今では消えてなくなりました。先生の落ち着いた声に、冷え切っていた私の心がどれほど癒されたことか…。私とは対照的に背がすらりと高く、思慮深い先生は「イギリスのジェントルマン」という言葉がぴったりの紳士でした。一方で、干し柿をおいしそうに召し上がる姿は無邪気な子どものようでもありました。

先生は、ご自身の多くの患者様を私の治療院にご紹介くださいました。西洋医学の医師が患者に小さな整体院を紹介するなんて、一般的にはあり得ないことだと思います。よほど信頼してくれていたのでしょうか。先生のその思いが本当にうれしかった。治療家として、大きな自信になりました。ありがたいことに、現在も先生の患者様のほとんどが来院されています。先生の分まで、皆様の健康のための治療に全力を注いでいく所存です。

「いつかは先生が目指す“三位一体療法”のお手伝いをさせてください」と約束していました。シュタイナー医学の研究者でもある佐藤先生にとっての三位一体とは「霊」「魂」「体」。この3つのバランスを取ることこそが医療では重要と考えておられました。特に最近の精神神経症状の治療において、うつやパニック、不安などは病気ではなく、自己個性の理解とコントロールができていないことが原因であるため、一般的な薬物療法は一時的な対処療法に過ぎず、根治せずに再発を繰り返してしまうと話しておられました。

私の整体法も「心」「食」「動」、気心均整術で表現するなら「気(霊)」「心(精神)」「均整(体)」の三位一体を重視しているので、先生のお考えには共感できました。三位一体療法に「西洋」「東洋」の区別はありません。最近は特に西洋医学に依存、傾倒し過ぎている日本において、三位一体療法の実現こそが先生の夢でした。志半ばで旅立たれてしまったことが悔やまれますが、今後は私が先生の理想とする医療の確立に少しでも貢献できるよう、シュタイナーの文献などで勉強を重ねながら精進してまいります。