異常の原因を探る「目」を持っているか?

前回、お話した例のほかにも、同じようなケースに出逢うことはよくあります。

体がだるく、背中に痛みがあって夜も眠れなかったB さんの例です。Bさんはもちろん病院へ行き、いろいろと検査を受けたそうです。

結果は「どこにも異常が認められない」という診断。

ビタミン剤を処方されて帰ってきたそうです。

「現実に、体だるいし、痛みもあるのに、なぜ“異常なし”なのか、はっきりいってその診断には不満がありました。」と、Bさんはいかにも、納得がいかないといった様子で当院へやってきたのです。

診るとBさんは、背中にちょうど真ん中くらいにある第九胸椎という椎骨が、右に3 ミリほどずれていました。

骨がずれたことによって、その周りを囲んでいる神経が圧迫
されて、背中に痛みが走っていたのです。

夜も眠れないという状態もまた、この第九胸椎のズレに原因が探れます。第九胸椎は睡眠やストレスの中枢でもあり、大脳と密接な関係をもっています。

ですから、この椎骨に異常が生じると、正常な睡眠がとりにくいという状態が起こります。

Bさんの“体の異常”の原因はここにもありました。夜も眠れず、常に体がだるく、背中に痛みもある。

明らかに異常が発生しているのですから、原因は必ずどこかに
あるはずです。それが第九胸椎のズレだったのです。
にもかかわらず、「異常が認められない」という医師の診断。

このことは言い換えれば、「異常を見つけることはできなかった」という見方が成立するといえます。

こんなケースもありました。肩こりに悩むCさんの場合です。

Cさんが病院で受けた診断は「筋肉が収縮している」というもの。受けた治療は、電気や温熱パット、パルサー治療です。そして「家でも続けるように」と渡されたのが、冷湿布だったそうです。

この治療は明らかに矛盾しています。確かに、筋肉が収縮
しているのであれば患部を温めてその収縮を緩める必要があります。

電気や温熱パットはそのための治療としては間違っていません。
しかし、なぜ家で続ける治療が「冷湿布」なのでしょうか。

「冷」は冷やすこと。温めなければ改善しない筋肉の収縮には、明らかに逆の作用をもたらせています。

冷やしていいのは、打撲して炎症を起こしている初期の段階だけです。

なぜこのような矛盾した、もっと強い言葉で表現するなら、本末転倒ともいえる治療が行われてしまうのか。私には不思議でなりません。

そもそも「肩の痛み」=「筋肉の収縮」に原因が集約されてしまうことには、大いに疑問を感じます。なぜかは後で詳しく述べますが、この問題は決して私だけが抱いているわけではありません。

現実に肩に痛みを感じ、治療を受けながら、一向にその症状が改善されない当の“本人”が、いちばん強く感じているようです。

当院にはそういう方が多く来院されます。

肩に痛みを感じている人ばかりではありません。膝に痛みを持つ人もまた、同じような疑問を抱いているようです。

「太っているから膝に負担がかかるんです。瘠せなければ膝の痛みは消えませんよ」

「年齢を重ねると、骨は老化しますからね」

たいていの人は、こんな言葉に納得のいかない感情を抱いているようです。

なぜか。その理由ははっきりしています。痛みがとれないからです。

一時的に痛みが消えたと感じることはあっても、それは長く続かないのが現状のようです。

つまり、痛みを引き起こしている根本的な原因を取り除く治療が、ほとんどの場合、行われていないからです。

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